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2Dと3D

合成写真をどう作るか?

2003年のサイト立ち上げ以来、当サイトでは復元画像の制作に2DCGと3DCGを併用しています。それぞれ得意な表現方法が異なるのですが、ここではちょっと、どういう使い分けをしているのか記してみたいと思います。

2DCG=合成写真

コンピュータを使って、2次元平面上で作成するグラフィックを、いわゆる2DCGと称します。要は、昔からある「合成写真」の制作を、デジタル的にやっている…といったほうがわかりやすいでしょうか。

以下は、作業工程を概略的に示したものです。ベースとなる現地写真の撮影→合成パーツの素材となりうる現存城郭の写真の撮影→合成作業、、、というのがおおまかな流れです。使用ソフトは、いわゆる業界標準的な画像処理ソフトである「Adobe Photoshop」シリーズを使っています。

この手法のメリットは、移植パーツがなにしろ写真ですから、ハマッたときにはそれこそ非常にリアルなグラフィックが得られることです。また、後述の3DCGに比べれば直感的に理解できる手法なので、初心者でも手っ取り早くチャレンジすることができるでしょう。

デメリットは、とにかく合成用のパーツが大量に必要なことに尽きます。ソフトウェア上で多少の変形や色調整はできますが、あまりいじりすぎるとクオリティの低下につながります。理想を言えば、合成したいシーンにぴったりな画像があればベストですが、そのためには、「同じ櫓を角度を変えて何枚も撮っておく」「異なる天候のときにも撮っておく」といったマニアックな素材収集が必要です。あとは、制作者のテンションやコンディションによって品質にバラツキが出ることも問題ですね。。。

3DCG=仮想空間での立体造形

で、もう一方の手法である3DCGです。かつてはかなりマニアックな手法でしたが、近年ではリーズナブルなソフトもたくさん発売され(フリーソフトさえある)一般的なPCでも十分現実的な手法になりました。当サイトでは「Shade」シリーズを長らく使っています。

先ほどと同様、四ツ門を例に、画像を得るまでの工程を図化してみました。資料をもとに3次元データを作成→それっぽく見せるための表面材質や光線状態の設定→データを絵として出力する「レンダリング」…というのが一連の工程になります。

この手法のメリットは、一度データができてしまえば、角度を変えたり、材質を変えたりした画像を作るのが極めて容易な点です。2DCGは「ちょっと角度を変えたいな」と思えば即、前面やり直しになってしまいますが、3DCGでれば、割と容易に融通を利かすことが可能です。また、連続的に角度や視点を変えた画像を出力することで、アニメーション表現ができてしまうのも3DCGならではの芸当でしょう。

デメリットは、3次元データを作成する手間が膨大であることと、ある程度のクオリティを出すためには、ソフトウェアの習熟にそれなりの時間が必要な点でしょう。

目下、ハイブリッド化を進めています

それぞれ一長一短ありつつも、おおむね当サイトでは、静止画復元画像=2DCG、動画=3DCGという使い分けをしてきました。静止画で見せるなら、形状的な正確さよりはパッと見の「それっぽさ」を優先したほうがよい&動画はそもそも3DCGじゃないと無理…という理由からです。

しかし、2017年のリニューアルに伴い、静止画においても段階的に3DCGを導入していくことにしました。この10数年の間に、3DCGの表現力が上がってきていることもありますが、より根本的には、建築物のサイズ・位置が、より正確に合わせられる点でメリット大きいからです。

以下に、同じ四ツ門復元画像の2DCG版(左)と3DCG版(右)のを並べてみました。左の2DCGでは、ほぼ目分量で建物位置を合わせていたため、建物の位置や、それに伴う相互の見え隠れ関係が不適切だったことがわかります。

建築物の位置関係は、城の防御力の評価のみならず、広く言えば景観シミュレーションの根幹にかかわる部分でもあります。ちょっとどこまでやり切れるのか不安なところもありますが、ぼちぼち更新していきたいと思います。

(初版:2017.07.15)