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安善小路修景案(1)

安善小路とは?

村上旧市街地の中心部に、安善小路と呼ばれる通りがある。全長わずか300mほどの通りではあるが、周辺には歴史のある寺社や石垣の坂道、料亭等が集中し、城下町らしい風情が色濃く残っている。少し前までは住民の散歩コースといった観であったが、近年は町屋散策ブームやら地域で仕掛ている「宵の竹灯篭祭り」などの効果もあって、観光客にも注目されるスポットになりつつある。

そんな安善小路で2005年、沿道住民の話し合いにより 「美しい安善小路と周辺地域にするための住民協定」が成立した。以前から同地域では「チーム黒塀プロジェクト」という団体が、ブロック塀の黒塀化を進めていたが、今後は建物の修景や電柱の地中化、道路の石畳化etcを住民自身の手で推進するという。行政頼みのまちづくりからの脱却を目指すうえで、これはまさに画期的なことだと思う。

…というわけで今回は、安善小路沿線の修景CGを、住民協定の内容を踏まえつつ作成する。幸いにも、安善小路の住民運動が国土交通省都市再生本部の全国都市再生モデル事業に選定され、この手のCGが必要だとのことで、製作にあたっては「チーム黒塀プロジェクト」と詳細を調整。事前にディテールを詰めた上で、住民説明会やシンポジウムでの使用を想定しつつ製作を進めた。

(2006.05.08初稿 2006.08.20修正)

1)小町側入口~浪漫邸

さて、小路の入り口にあたる小町側のT字路から見ていこう。現状では右手が「トラヤ」というパン店、左手が銀行の駐車場となっている。突き当たり左手には近藤家の土蔵、その裏手に近代和風建築「浪漫邸」が建っている。

現状の一番の問題点は、小路と駐車場の視覚的な区分が不明瞭であるため、「小路の入り口」にふさわしい適度な閉塞感が感じられないことであろう。また、折角アイストップの位置にある正面の土蔵が板覆いになっており、景観構成要素としてのパンチが弱い。

以上のような問題意識を踏まえ、以下の方針で修景を施すこととした。

・土蔵の漆喰壁を復活、シンボル的な建物に演出
・駐車場境に板塀を立て、「小路らしさ」を演出
・右手建物の外壁を板塀と統一感のあるものに
・路面を石畳化、電柱を撤去

路面舗装の効果もあるが、小路の導入部としての演出があるだけで随分イメージがよくなった。あとは、小洒落た案内板などがあればなお良いだろう。

2)浪漫邸角~銀行裏

通りの付き当たりまで進み、浪漫邸の角を左折した位置から撮影した写真である。左手が浪漫邸の外壁、右手が通りの名の由来となった安善寺、正面には一般住居が並んでいる。

現状でも景観統一度はかなり高いが、折角なので以下の点についてさらに改良を加えることとした。

・左右の黒塀を屋根・土台つきのものに変更
・突き当りのお宅の外壁を下見板張に
・左手の鉄骨建物の目隠しに「見越しの松」もどき
・路面を石畳化、電柱を撤去

もともと景観統一度が高かっただけに、閑静な小路の風情がかなり向上したように思われる。なお、左手の塀の建て替えについては、このCGを作成している間に既に完了している。

3)安善寺ガレージ

浪漫邸脇のクランクを抜け、親不孝坂方向を望んだ位置からの画像である。右手奥に見えるのが小路の名前の由来にもなった安善寺の山門(市文化財:1712年築)で、この小路に歴史的な風格を与える重要なポイントとなっている。

見ての通り、この地点の景観上の課題は境内にめり込んだガレージである。現状では塀とのデザイン的な連続性があまり考慮されていない上、伝統建築にはない建物背後側への片流れ屋根となっている。

というわけで、以下の点に修景を施した。

・ガレージの外壁を板張りに
・屋根形状を切妻屋根とし、屋根面を道路に見せる
・塀の切れ目を植え込みで目隠し
・路面を石畳化

ガレージ以外の景観要素がほとんど変わっていないのに見た目のイメージは大きく変わった。屋根形状がいかに景観に影響を与えるのかを改めて実感した。

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