おしゃぎり360度ビュー
「村上大祭」で曳かれる山車=「おしゃぎり」
毎年7月7日に行われる村上大祭では旧城下19町内で「おしゃぎり」と呼ばれる山車が曳きまわされる。車輪直径およそ180cm、全高5mを超える大型の二輪山車であり、車体各所に当地伝統の漆工・金工を駆使した装飾が施されているのが特徴である。
城サイトとは一見関係のないコンテンツではあるが、実はこの祭りの発祥は村上城築城と密接にかかわっている。1620年頃、村上城は堀直竒によって大修築されるが、その際、「城から神様を見下ろすのは恐れ多い」として、総鎮守である羽黒神社を、本丸直下(元羽黒)から山居山の中腹(現在地)に移転している。実際のところは城下の都市計画の再編によるものであろうが、ともあれ、この遷宮を祝って城下の町民が大八車を引き出して練り歩いたのが、現在に続く村上大祭の発祥である。
当初は引き回される屋台も素朴なものであったろうが、次第に装飾も華美となり大型化していく。寛文年間に記された「松平大和守日記」には、女中たちと祭を見物した記録が出てくるし、1700年代中盤の「村上町年行事所日記」にも、殿様の奥方が毎年のように祭り見物のため隅櫓に登った…との記録が残されている。これらを踏まえて考えると、享保年間ごろには現在のようなスタイルに落ち着いたと考えられている。(しまいには新造予定のおしゃぎりが華美過ぎると、藩当局から注意を受ける事態にもなっている)なお、現存する最古のおしゃぎりは、宝暦10年(1760年)製の肴町の屋台である。
城下町で引き回すのに適した構造
というわけで今回は、古い形態を残す塩町のおしゃぎりを参考に3Dモデルを制作した。あくまで概念的な形状として制作しているので、部分によっては他町内の意匠を参考にしたり、データの軽量化のため細部を簡略化した箇所も多いことを最初にお断りしておきたい。とりあえず、動く寺社建築(?)みたいなおしゃぎりの雰囲気を、多少なりとも感じていただければ幸いである。
で、3D化作業をしているうちに気付いたのだが、多くのおしゃぎりは2F部分が1F部分より大きく張り出して作られている。人込みの中でも目立たせる工夫であろうが、築造年代が下るほど、2F部分の張り出しは大きくなるようだ。また、大八車に由来する2輪という基本的なスタイルも、狭い街路で頻繁に方向転換するには都合のいい構造である。こういった部分にも、城下町の祭礼で用いる山車としての性格が伺える。
(初版:2018.12.28)