ビジュアル再現 村上城 ~3DCGでよみがえる村上城~ ロゴ
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城系VR・ARアプリ考

普及する城系(!)VR・ARアプリ

CGを利用して、あたかもその場にいるかのような臨場感を生み出すVR・AR技術。ここ数年で城関係のスマホアプリに搭載されることも増え、有名城郭はもちろん、地方の中小城郭においてもAR・VRコンテンツが気軽に楽しめるようになりました。筆者がざっと調べてみたところ、各地の整備状況は以下のような感じ。ヌケモレも多いかと思いますが、結構全国まんべんなくあるようです。

村上城の画像再現をコンセプトとする当サイトにとっても、そうした動きは気になるところです。城系VR・ARアプリの現状について、少々まとめてみました。

全国の城関連VR・ARマップ

ストリートミュージアム/独立系アプリ/現地施設・端末貸し出し型

数え方にもよるとは思いますが、VR・ARと銘打った城系コンテンツは、2018年12月現在、およそ30弱あるようです。文字通りのVRやARから、CGムービーやクイズ形式といったものまで、コンテンツは結構バリエーションに富んでいます。実のところ、何を持ってVR/ARと称しているのか、定義はあまりはっきりしていないようです。

配信方法は主に3パターン。まず一つ目が「VR○○城/AR□□城」といった独立系アプリ。自治体や企業が独自に作って配布しているものなので、リアルな再現に拘ったものから、もともとあった3DデータをVR向けに変換したものまで、各地の事情によって様々です。中には「大阪城炎上」をAR再現できる、ちょっと強烈(!)なアプリまでありました。2つ目が、凸版印刷が展開している「ストリートミュージアム」という共通プラットフォーム内で提供されているアプリ。同社が自治体から受託を受けて制作したコンテンツは、基本的にこのアプリを通して配信され、現時点では14城。独立系アプリと勢力を二分する形になっています。最後に3つ目が、アプリ配信ではなく、各自治体の資料館や博物館内での上映、もしくは端末貸出方式のみで提供されているもの。このパターンはなかなか検索にもひっかかってこないので、ここで拾い切れなかったものも結構あるかと思います。

城郭名対応OS非現地対応概要
会津若松城--「VR幕末の会津若松」を鉄門内で上映。「幕末の鶴ヶ城の中を巡る」「城下町を巡る」「鷹になった気分で空から城下を巡る」の3つのコースあり。
壬生城Android
iOS
すべて視聴可「壬生城大手VR」を配信。アプリを用いず、Googleストリートビュー上で配信されているのがユニーク。いわゆるパノラマですね。
江戸城Android
iOS
ショートムービーのみストリートミュージアム内で提供。現地に残る石垣上に、かつての建造物を重ね表示するARコンテンツが中心
滝山城Android
iOS
滝山アニメ/滝山MAP表示可独自アプリ「AR滝山城」。現地に残る土塁や空掘の上に、柵や門、櫓を重ね表示するアプリ
甲府城Android
iOS
ショートムービーのみストリートミュージアム内で提供。城と合わせて城下町の再現にも力を入れたコンテンツ構成。
松本城Android
iOS
ショートムービーのみストリートミュージアム内で提供。現地のポイント20箇所で、でスマホをかざすとVR復元された本丸御殿以下、往時の建物が表示されます
上田城Android
iOS
パノラマのみ独自アプリ「VR上田城」を配信。現地でのAR表示がメインですが、大手門前のみお試し視聴が可能
高田城--上越市歴史博物館/高田城三重櫓内で視聴可能。かつての高田城とその周辺や、高田城の建物の内部を移動可。
金沢城Android
iOS
×「VR金沢城」。建物の仮想復元ではなく、現地の遺構に設置したマーカーに対応して、解説文を表示するタイプのアプリ。いわゆる情報表示系ARですね。
福井城Android
iOS
ショートムービーのみストリートミュージアム内で提供。御本城橋から本丸御殿、天守、天守からの眺望など10箇所の景観を、VR画像を音声ガイドつきで視聴可
西尾城Android
iOS
パノラマ/VR視聴可「西尾城デジタルアドベンチャー」。天守からの360度ビューや、建物内部のVRを視聴可。現地に行かなくても見られるコンテンツの率が高い。
彦根城Android
iOS
ショートムービーのみストリートミュージアム内で提供するほか現地のVRシアターでも上映。城郭建築の再現に加え、築城に至るストーリーの見せ方を重視したコンテンツ。
安土城Android
iOS
ショートムービーのみストリートミュージアム内で提供されている「VR安土城」と、それに先行して作成された独自アプリ「「VR安土城 タイムスコープ」の2つがある。
高取城Android
iOS
AR高取城の視聴可「ええR高取町」。現地で配布されている観光パンフと連動(2次元バーコード読み取り方式)した設計になっていますが、実はネットからもDL可能。3Dモデルをスマホ上でぐりぐり動かせます。
大和郡山城Android
iOS
パノラマ2箇所パノラマ表示コンテンツが中心。観光アプリ「ココシル」内から、さらに独自アプリを落とす必要アリ。
大阪城Android
iOS
ARコンテンツ表示可「AR大阪豊臣天守」。現在の白い天守のそばに、秀吉が立てた漆黒の大阪城天守を表示。しかも炎上!…ってコピーが物騒である(汗) 民間コンテンツ。
高槻城Android
iOS
検証不能大阪産業大がサポートして作った「AR高槻城」アプリを配信。現地でなくても見られるプレビューモードもあるのだが、ウチの環境では「現地位置取得中」画面でフリーズして動かん。。。
和歌山城Android
iOS
ショートムービーのみストリートミュージアム内で、VR映像と街歩きを組み合わせた(?)「和歌山城リアル謎解きゲーム」を提供。
姫路城Android
iOS
ショートムービーのみストリートミュージアム内で提供。もともと残ってる建物が多いので、普段見られない部分のVR表示や空撮映像中心のようです
屋島城Android
iOS
ショートムービーのみ珍しい古代山城コンテンツ。独自アプリ「蘇る屋島城」もあるが、ストリートミュージアム内でも提供。
高松城Android
iOS
ショートムービーのみ独自アプリ「バーチャル高松城」もあるが、ストリートミュージアム内でも提供。さらに現地無料貸出用タブレット専用コンテンツもアリ。
丸亀城Android
iOS
丸亀城めぐりの一部コンテンツのみいわゆるVR系コンテンツのほか、丸亀城にゆかりの人物と記念撮影ができるなど、エンタメ的な要素も。360M超の重量級アプリ。
宇和島城Android
iOS
×現地専用アプリ。城内4か所でかつての景観をAR表示。現存天守の前に立ってた慶長度天守が見られるというのは興味深い。
福岡城Android
iOS
ショートムービーのみストリートミュージアム内で提供。天守実在説に基づくVRコンテンツが見られる
名護屋城Android
iOS
ショートムービー/パノラマ一部独自アプリ「バーチャル名護屋城」を配信。ストリートミュージアム内でも提供アリ。なお、充実したコンテンツではある模様だが、重量は驚異の600M超。。
熊本城Android
iOS
ショートムービーのみストリートミュージアム内で提供。
原城Android
iOS
ショートムービーのみストリートミュージアム内で提供。
延岡城Android
iOS
VR視聴可「VR延岡城」アプリ。現地に行かずとも動くVRコンテンツがある。サブタイトルの「千人殺しの石垣」がコワイw

※このほか、制作中・予定の情報として仙台城白河小峰城の報道あり。
筆者スマホでの動作検証による。すべて現地で作動させたわけではないので、内容は参考程度とご理解下さい。



再現精度の明示が今後の争点?

以上のように、多種多様なアプリが展開されているわけですが、基本的には、現地利用を前提に設計されれているものが多いため、アプリをダウンロードして即使えるコンテンツは限られます。また、多くのアプリが100M程度の容量が必要なので、訪城計画と合わせて計画的にDLしておいたほうがよさそうです。

一方、城オタ的には、これらのコンテンツの再現精度が気になります。「仮想現実」「拡張現実」と銘打つ以上、何を根拠に作成されたのかは、観光向けのアプリとはいえしっかり把握したいところです。

実はこの件に関し、文化庁は「文化財の観光活用に向けたVR等の制作・運用ガイドライン」(2017)を策定し、その中で「時代考証の取り扱い」を示しています。VR等の対象となる文化財には、多くの場合「確証のある事実は多くはなく諸説がある」ことを前提とした上で、以下の4点を示しています。(同書P.26-27より筆者整理)

1)時代考証が諸説ある場合は一つの説を選定する。
2)一度選定した時代考証の説は一貫して支持する。
3)事業期間の制約(1ヶ年の事業)による時代考証の一部割愛の可能性を踏まえておく。
4)事業目的(観光資源化)による時代考証の一部割愛の可能性を踏まえておく。

争点となるのは「時代考証の一部割愛」を条件付きで許容した3)4)でしょう。あまりにもいい加減な「割愛」であれば、それは妄想になってしまいますし、逆に厳密に排除しすぎれば「仮想」再現すら不可能になってしまいます。どこまでが史実に基づく「復元」で、どこからが考証を「割愛」した部分なのか、VR・ARだからこそ、根拠をもって明示することが重要になってきます。

上記アプリをこの基準にあてはめてみると、多くは監修者の名前を出すなどして、この点に関し一定の配慮をしています。しかし、中には、監修者がはっきりしていないものや「専門家」といった漠とした記述にとどまるケースも見受けられました。アプリの制作年が古いものは、そもそもガイドラインがなかった時代に作られているので、バラツキがあるのかもしれません。

そんな中、ある種の潔さを感じたのが、史料が限られる大和郡山城のケース。実は同アプリにおいては「この郡山城再現CGは、江戸時代の絵図に描かれた郭や建物の配置を参考にしつつ、豊臣秀長時代の様子を想定して作成したものです。学術的・実証的に復元したものではありません」と、いわゆる「学術的な復元」とはズレがある旨が明示されています。評価が割れるところかもしれませんが、筆者個人としては、無根拠にもっともらしいVRを示すよりは、よほど真摯な姿勢ではないかと思いました。今後はこのような実態も踏まえ、考証・およびその割愛ラインがさらにブラッシュアップされていくのではないかと思います。

ちなみに、村上城の場合、現時点で明らかになっている史料だけでは、相当の「考証の割愛」をしない限り、文化庁ガイドラインが言うところのVR化は難しいと思われます。

初稿:2018.12.01