ビジュアル再現 村上城 ~3DCGでよみがえる村上城~ ロゴ
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城CGと「Twinmotion」

城CGと「Twinmotion」

「本庄城」をディテールアップしたい

Shade3Dのみで作ったもの

今回はCG制作に関するややマニアックな話です。当サイトでは2018年に、「中世本庄城の姿とは?」の記事制作と合わせ、戦国期の村上城(=本庄城)の3D化を試みました。城全体を遠くから見せる遠景用モデルとして割り切って造形したため、無理やり近づいてみるとこんな感じ。地形のテクスチャ解像度がまるで足りず、植生も再現されていないため、詳細な部分を見せるのはちょっと厳しかったんですね(痛)

というわけで、なんとかこれを近接撮影にも耐えられるように改造して動画化したいと思っていたわけですが、ネックとなっていたのが「植物」のモデリング。遠景であれば板ポリゴンにそれらしい絵を貼りつけとけば多少はごまかせますが、近接アングルに対応するには、立体物として植物を作っておかねばなりません。

で、多少CGをかじったことのある人ならわかると思いますが、一定のリアルさで植物を作るのって、結構大変です。凝り出せば木1本に数百~数千ポリゴンは使いそうですし、データが重くなれば、そのために食われるリソースも馬鹿になりません。ましてや「本庄城」の場合、約400m×700mの臥牛山全体に数千本単位で植林(!)するハメになりますから、ほぼお手上げ状態だったわけです。…草は作らないのかって? いや、無理でしょそれ。。。

建築ビジュアライゼーションソフト「Twinmotion」

ところが先日、EPIC Gamesさんが提供している「Twinmotion」というソフトの存在を知りました。本来は建築ビジュアライゼーション用のソフトなのですが、草木を生やす機能が大変優秀な上、難しい設定ナシでもフォトリアルな出力が可能。おまけに非商用ユーザー向けに無償版まで用意されています。これは城CGにも使えるんじゃないかということで、早速、Shade3Dで作った「本庄城」のデータを読み込ませてみました。

実際の作業は以下のような感じ。読み込んだ地山の形状データに対して、生やしたい樹種をいくつか選択→ペイントツールで生やしたいエリアを塗る→わさわさ草木が生えてくる。ほんとそんだけ。しかもこの草木、動作が軽量な割に、雨風に反応するわ、成長もするわ、季節によっては葉っぱが落ちたり花が咲いたりもします。あれほどめんどくさい作業が、なんだか楽しい作業になってしまったぞ。ナニコレスゴイ!

Twinmotionの植生ペイント画面

中世城郭を作るのには最適だw

Twinmotionのもう一つ素晴らしいところは、こうして作ったデータを色々な形式で出力できることです。静止画や動画はもちろん、簡易VR用の360度パノラマ、プレゼン用のウォークスルーなんかにも対応しています。また、リアルな映像で定評のあるUnreal Engineのレンダラーを積んでいるので、アウトプットは高品位かつ高速です。最初のシーンが、ものの数十分でこんな感じにブラッシュアップできました♪

本来の使い方とは若干ズレているのかもしれませんが、Twinmotionは市井の城CG製作者(…ワタシ以外あんま見かけたことないけど)にとっては非常に使えるツールだと思います。特に視覚情報に占める草木の割合が大きい中世城郭のビジュアライズにおいては、絶大な威力を発揮してくれそうです。目下、自治体等が制作している城郭のCGは近世城郭が中心ですが、本ソフトの認知が広がれば、中世城郭のCG化事例が増えていったりするかもしれません。

Twinmotionの機能で植生を追加したもの

メイキング動画

最後にこのシーンのメイキング動画をつけときます。早送りで見せていますが、実際10分程度の作業時間です。

(初稿:2021_05_20)