安善小路修景案(2)
4)安善寺向かいの一般住宅
上の写真で示した安善寺の向かい側には、一般住宅が並んでいる。いわゆる町屋ではないものの、いずれも和風建築であり、屋根面の向きもそろっている。
今回の取り組みは住民の自助努力をベースとしているため、修景にあたってはコスト的な部分も考慮に入れなくてはならない。そこで、以下のような修景案とした。
・アルミサッシを木製サッシorレトロ調に
・外壁の下見板化orアースカラーへの塗り替え
・路面の石畳化
路面以外は大きく手を入れてはいないが、見た目のイメージは随分落ち着いたのではないだろうか。ちなみに外壁の材質変更については防火規制等の問題もあり、コスト的な課題をクリアできても、新建材を使わざるを得ないケースもあると思われる。そうした場合にも、せめて色調については最低限の統一感が維持できるようにすべきだと思う。
5)願浄寺裏(旧和泉屋前T字路)
安善寺前の通りを突き当たりまで進むと、旧和泉屋前のT字路に出る。画像はT字路上から安善寺方向を振り返った状況である。
この位置から見たときに気になるのが右手の願浄寺裏のブロック塀である。大仰な電柱が建っていることと相まって、板塀が続く通りの景観からはどうしても浮いて見えてしまう。
そこで、この地点については以下の方針に基づいて修景案を作成した。
・願浄寺のブロック塀を板塀に変更
・右手奥の一般住宅の外壁を下見板に
・路面を石畳化、電柱を撤去
ここではあくまでも案ということで、かなり立派な板塀を想定したが、実際にはブロック塀の上から板塀を打ち付けるなど、簡易的な工法でもそれなりの修景効果は望めるように思う。
6)願浄寺横(旧和泉屋前)
上の位置から突き当たりの「かつ春」前まで直進し、後ろを振り返った状況である。この位置が安善寺小路の寺町側入り口にあたる。
修景方針については上と同様であるが、この場所からは正面に石垣造りの「親不孝坂」や、その向こうの山並みが見通せ、景観上大きな意味を持つスポットとなっている。左右の建物の意匠や路面意匠が統一されれば、そうした景観が一層引き立つ。小町側と同じく案内板を設置するなどして、小路のプレミア感を演出する工夫があればなお良いだろう。
「たたき台」としての意味
今回は、路面舗装や電柱撤去まで踏み込んだ案を示したが、実現性はさておき、ある程度手をかければ、見慣れた町が一変する可能性を秘めていることを感じていただければと思う。
ただし、CGはあくまでもCGであり、現実にこの通りに修景が進むわけではない。むしろ、一枚のCGをたたき台にして、より良い修景案を考えたり、議論できる点にこそCG製作の意味はあるはずだ。
実際、本件に関しても、石畳の意匠について議論が交わされているそうだ。現状のCGでは、かなり凹凸のある石畳をイメージしていたが、「高齢者がつまづきやすく、危険ではないか?」「耐久性がアスファルトに劣るのではないか?」といった意見が寄せられたという。また、こうした意見を受けて、「目地を狭めて凹凸をなくした石畳なら良いのではないか?」「玉砂利洗い出しのほうが石畳より良いのではないか?」といった具合に、解決策を模索する動きもあるとのことだ。
旧来、この手の議論においては「修景賛成派vs反対派」という二項対立が容易に発生しえたが、「仕上がり」をイメージすすることで、少なくとも「なにが問題なのか」「どうすれば改善できるか?」という課題設定が可能になる意味はあると思う。今やちょっとした技術があればこういったシミュレーションをすることは容易なので、広く街づくり運動へ応用されてしかるべきだと思う。
※一連の住民運動の経緯は国土交通省年・地域振興局『全国都市再生モデル調査「地域資源を活用した景観まちづくり方策検討調査」報告書』(2006.03)としてまとめられたそうである。興味のある方はぜひどうぞ!