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町家に似合う道路幅(1)

道路幅と景観

村上の町並み形成を考える上で、一つの重要なポイントといえるのが、はるか昭和の半ばに決定された道路拡幅事業をどう捉えるか、という問題である。以下は2016年時点の村上市の都市計画図であるが、旧城下町地区(≒図中に赤破線で示された「重点地区」)を縦横に貫く形で道路拡幅が計画されていることがわかる。社会情勢が変わった現在では必要性が疑わしい路線も多いのだが、地盤沈下が著しい中心市街地の活性化、歩車道の分離、複雑な歴史的経緯etcと、さまざまな事情が絡むため、なかなか議論は前進していないのが現状である。

で、筆者的に気になるのは、道路を広げる/広げないの議論の前に、そもそも「村上にふさわしい道路幅とはどのくらいなのか」という検証が必要ではないか…ということだ。上に示した都市計画図を見ると、拡幅後の道路幅は、市内のどこであろうが判で押したかのごとく16mもしくは12m規格。ざっくり言って、現行の旧市街地の道幅の2~3倍に相当する。城下町という地域特性を踏まえれば、もっと多様な道路幅の設定があって然るべきではないだろうか。

というわけで、今回は町並みにふさわしい道路幅を探るべく、3DCGを用いた景観シミュレーションを試みる。

(2004_05_09:初稿/2017.07.19:追記)

町並みの現状

この企画の前提として、道路の拡幅が予定されている中心市街地のうち、特に伝統的建造物の残存度が高い、肴町~安良町、大町~小町の状況について確認しておきたい。

両地域とも、2002年の日本ナショナルトラストの調査によって「歴史的建造物」と認められる町家が20~40%程度残存していることが明らかになった。しかし、その中には、新建材による改変が進んでいたり、解体の危機に瀕している物件も多く、道路を拡幅するにせよ、しないにせよ、城下町らしい景観を形作るためには組織的な修景努力が求められている状況である。

一方、この通りの道幅は、筆者の実測によると広いところで8m、狭いところで約6.5メートルであった。自動車がなんとかすれ違い可能な幅であるが、歩車道の分離は一部を除いて成されていない。

シミュレーションの前提条件

以上のような前提を踏まえ、シミュレーションを早速行ってみようと思う。現実には、拡幅すればほとんどの建造物が新築に置換されるわけだが、ここでは道幅の変化だけを単純に比較検証したいので、建造物については条件をそろえることとする。

具体的には以下のように「道路整備と合わせて景観条例の制定や財政補助の拡充が図られ、個々の建物には高度な修景が施されている状態」とした。修景の用件としては、外壁の板張り化、アルミサッシの木格子窓への交換、屋根瓦の色彩統一等が行われたものとし、以下の3D図を起こした。建築年代、建物の利用形態によって、外観には多少の差をつけてある。この3軒の「バーチャル町家」を増殖させて、仮想の町並みを再現する。なお、スケール感がわかるよう、歩行者と自動車を概念的に示しておく。

では、建物単体としては一応の修景が施されたこれらの建物群は、道路幅によってどのような見え方をするのだろう? 早速次ページから見ていきたい。

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