村上城は黒い城?(1)
「黒い城」と「白い城」
「お城」と聞くと、白亜の大天守がそびえる壮観なシーンを思い浮かべる人はかなり多いだろう。具体的には右の写真のような光景だ。確かにこのようなイメージは決して間違いではないし、事実、白亜の楼閣が天を突く光景は、かつて日本のいたるところで見られた。特に姫路城などは「白鷺城」と雅称され、その美しさを江戸期から称えられてきた。
しかし、「城=白亜の建造物」という図式は必ずしも「すべての城」に適応できるわけではない。ちょっと考えればわかるように、白亜どころか「真っ黒」な城も多数存在するのである。
メジャーどころでは岡山城(右図)や松本城、熊本城がそれにあたり、特に姫路の隣国に位置する岡山城は、「白鷺城」こと姫路城との対比から「烏城」(うじょう:カラス城の意)と呼ばれている。このタイプの城も全国各地にあったようで、古図や古写真を見る限りでは、地域の隔たりなく全国的に分布が広がっている。
壁材の差は城主の好みと予算次第
このような見かけの差異を生み出したのは、言うまでもなく城の外壁材の違いである。姫路城をはじめとする「白い城」は、土壁の外壁の表面を漆喰の塗り込めで仕上げ、岡山城をはじめとする「黒い城」は、土壁の上に木製の板を貼って仕上げている(このような壁を「下見板張り」という)。
一見、後者のほうが旧式で、防火性能も低いように思われるが、実際には、江戸末期まで下見板張りの城郭建造物は作られ続けている。また、城郭建築の下見板の下には厚い土壁が控えているので、防火性能についても塗り込めの建物とほとんど差はない。
壁材の差は、城主の好みや金銭的な問題による部分が多かったと思われる。(実は、漆喰はかなり雨にもろい建材で、数年おきに塗り直しをしないとすぐにボロボロになってはがれてしまう。下見板張りは安価な上、耐久性も高く、通常5~60年は修理なしで維持できるという)(※)
■「白い城」姫路城
こりゃおなじみのイメージですね。吉宗と「じい」が出てきそうだ…。
■「烏城」こと岡山城
こちらのタイプも精悍な感じで美しいですね。
(※)
建築の視点から城を解説書した書籍では、三浦正幸『城の鑑賞基礎知識』(至文堂 1999)が秀逸。左の記述の多くは同書によった。